ホーム > まちの取り組み > 東京都
東京の防災を担う注目の2冊子
「東京防災」×「防災タウンページ」編集長対談
 30年以内に70%の確率で起きるとされている首都直下地震。首都圏だけでなく全国の国民が今、「東京の防災」に注目しています。

 ついに今回は夢の対談企画。増刷してもすぐ完売となってしまうという大人気の防災冊子「東京防災」の編集に携わられた船川さんと、全国で配布され地域の人たちに愛される「防災タウンページ」の編集に携わられた今宮さんのお2人にお話を伺います。どちらも東京の各家庭に配られている防災冊子、これからの東京の防災にどうアプローチしていくのか、強みや違いなどを伺いたいと思います!
行政としてできること、企業としてのチャレンジ
中央:NTTタウンページ今宮さん、右手前:東京都船川さん
───
今日は宜しくお願いします! ではまず、それぞれの冊子を作る事になった経緯を教えていただけますか?
船川
「東京防災」はですね、舛添都知事が公約として掲げていたというところからはじまりました。都知事が若い頃にスイスに留学をされていて、スイスで各家庭に「民間防衛」という本が配布されていたのを見て、「こういったものを東京都でも各家庭に備えてもらいたい」という想いを抱かれていたそうです。われわれ行政は“公助”としての取り組みはしてきているものの、阪神・淡路大震災の時もあったように、災害時は公助だけでなく近隣の人たちで助け合い、自分の命は自分で守る知恵が必要です。そういった知恵をつけてもらえるきっかけとして制作しました。なにより、各家庭への全戸配布というのは過去例のない新しいチャレンジになりました。
田中
なるほどなるほど。今宮さんはいかがですか?
今宮
会社の中で新たなコンテンツとしてチャレンジしていこうと「防災」にフォーカスしたことがきっかけで制作に至りました。われわれはタウンページ社として、電話帳をお配りする各家庭に今回「防災タウンページ」もお配りしています。配布開始当初は10区、そして今後は東京23区全域に配布していく予定です。
何が一番欲しくて、何が一番要らない情報なのか
───
それぞれの冊子でのこだわりや、力を入れた事は何ですか?
船川
まずは関心を持ってもらわなくてはいけないと思うので、中身を工夫しました。ぱっと開いたときに次のページもみたくなるようにイラストや、読みやすさなどにこだわったり、後ろから開くと漫画が入っていたりなど、いつのまにかなんとなく全部見てしまったという状態になるように設計しました。
田中
民間防衛や全国の防災に関する冊子を見てきましたが、ここまでデザインにこだわった冊子はこれまでもあまりないとおもいます!
船川
行政がやると、「ちゃんと伝えなければいけない!」「誤解を招いてはいけない!」とどうしても文章が多くなってしまいがちですが、イメージ・想像ができるように、そして何が一番欲しくて、何が一番要らない情報なのか徹底的に考えました。これって行政としてはリスキーな事なんですけどね。
田中
そうですよね。でもそれを決断されたことはとても素晴らしいと思います。決めるに至る会議が大変そうですが(笑)
船川
はい、決定するためには人数が多くない方がいいと思いました(笑)
全員
ははは、そうですよね!
田中
今宮さんはいかがですか?
今宮
届きましたはいいけれど、捨てられてしまっては無駄になってしまいます。今や書店へ行けば山ほど防災の啓発書もありますから、まちの情報誌「タウンページ」として提供するに適した項目、質、量などを検討し、その結果としてポイントを絞った記事に加え、できるだけ“地図”に力を入れて編集しました。自転車や歩いてまわれる範囲、まちの地形をすぐさま頭でイメージしてもらえるように地図へのハザード情報も多く盛り込みました。公衆電話の位置だけではなく、公衆トイレなどもプロットしているのが特徴です。
「地図」の見せ方と活用へのこだわり
───
「東京防災」と「防災タウンページ」の違いとして“地図”の表現の方法や冊子への取り入れ方が大きなポイントだと思いますがいかがでしょうか?
船川
そうですね。「防災タウンページ」のように本当は冊子の中に地図を入れられたらよかったんですけど、われわれは別紙にしました。そのかわり、私たちの地図は自分が行動する地元+周辺2〜3駅程度を範囲にし、広げられるようにしています。他にも地図に掲載する情報は本当に基本的なものだけにしたのもこだわりです。
田中
あれ?本当ですね! とてもシンプル。
船川
そうなんです。目印となる小学校や駅などだけ掲載させていただいていて、それ以外の細かい情報はこれを手にとった都民のみなさんに実際に歩いてもらって、自分で探し出し、自分で書いてもらえるようにしました。やはり、街は日々めまぐるしく変化していると思うので。
田中
なるほど! これは面白いですね。今宮さん、先程もこだわった点として伺いましたが、防災タウンページの地図は逆に本当にたくさんの情報が詰まっていますよね!
今宮
そうなんです。見せ方は異なるかもしれませんが、私たちの防災タウンページには地図にたくさんの情報があるからこそ、実際に地図を見ながら街を歩いてみてほしいと思っています!
他にも、いざ手にとったユーザーの方からは、AEDの設置場所やコンビニの場所など、もっと情報を入れてほしいという声もいただいています。とはいっても、先程船川さんがおっしゃったように、入れようと思ったら文章ばかりが増えてしまいます。紙としての防災タウンページだけでなく、今後はアプリなどスマートフォンやPCを介したサービスも提供させていただき、 ひとりひとりが自分のほしい情報を選択出来るようにしていきたいと思っています。
田中
「東京防災」は考えさせ行動させるところまで設計されていて、「防災タウンページ」は充実した情報から自分で欲しい情報を選択できるようにするという、同じ「防災」に関する地図でもアプローチや見せ方が違って面白いですね!
今宮
たくさんの情報が詰まっている「防災タウンページ」を見て街を歩き、「東京防災」の地図に書き込んで自分の防災地図を作っていくという、2冊を上手く活用していくことができると素敵ですね!
全員
いいですね!!
「2冊どちらか」ではなく、「使い分け」ができる
───
先程の地図に関してもそうですが、それぞれ同じ「防災」でもつくり方や強みが違うので「使い分け」ができそうですね!
今宮
「東京防災」は「防災タウンページ」と比べて厚さがあって情報量があるけれど、見にくくないし、楽しみながら見れると思います。なので、「東京防災」は時間をかけて読む家族全員のもの。「防災タウンページ」は薄くて軽いので、どちらかというと気軽に持って出て、電車での移動中や病院の待合室などで読めるものだと思っています。
船川
「防災タウンページ」はやっぱり厚さが苦にならないからいいですよね。「東京防災」もできる限り小さく薄くした方なんですが、やはりとても悩んだところです。そしてこの薄さからも、「防災タウンページ」は必要なプライオリティをつけて制作されていることがわかるなぁと思います。
今宮
ありがとうございます。そうですね! たくさん伝えたい事はあったんですが、5つのポイント+各区ごとの情報に絞って、本当に必要な情報だけを載せるようにしました。
実践と活用の「東京防災」、地域とデバイス展開の「防災タウンページ」
───
では最後に、まさしく共通認識としての「作って終わりでは意味がない」という所に対して、今後どうしていきたい! こういうビジョンや目標がある! というところを教えていただければと思います。
船川
そもそも「東京防災」はこれからの防災ムーブメントを起こすきっかけでしかないと思っていて、東京の防災力の底上げになればと思っています。まずは書いてある事を知っていただいて、知識をつけてもらい、“今”からやってもらえるよう、さらに多くの都民の方が進んで防災に参加したくなるような施策などを考えています。
田中
「東京防災」のキャッチコピーにも「今やろう」と書いてありましたよね!
船川
そうなんです。こうして防災という文化が根付くようにしていきたいです。とは言っても、端から端まで読まなくてもいいんです。必要なところから、必要なだけ使ってもらえたら嬉しいです。これからは、誰でも避難所に行くのではなく、自分の命と家を事前の備えで守り、自分の家で避難生活を送るという促しをしていきたいと考えています。日常的に備蓄をする「日常備蓄」も促していきたいです。
田中
今宮さんはいかがですか?
今宮
先程も少しお伝えしましたが、今後は冊子だけでなく、次回の発行に合せて現在アプリを構築中です。ユーザーの方々の声を大切にし、欲しい情報だけを選択して瞬時に見ることができるようにと考えています。冊子との連携で上手に活用していただくことが実現できれば、色々な世代の方にももっと近づくことができるのではないかと考えています。
田中
防災タウンページは今年は23区全域に配布され、そして毎年更新していく冊子でもありますよね!
今宮
そうですね、コアとなるコンテンツは変わらなくとも、今回は「ペットのいる方への情報」や「高齢者の方への情報」「マンションにお住いの方への情報」など、毎年コーナー的に中身が変わっていくなど、毎年更新する事で新しい情報の発見と毎回見る機会や楽しみを作れたらとも思っています。船川さんのおっしゃった、「楽しく日常的に取り入れる防災」には私も大いに共感しているところです。
田中
これからの「東京防災」「防災タウンページ」の展開が楽しみです! お2人とも、学びの多い時間をありがとうございました!
 「大人だけでなく、子どもからお年寄りまで楽しみながら、今できる防災を知ってアクションを起こしてほしい!」という同じビジョンを掲げる両冊子。
これからの東京は災害に対して強く、しなやかになっていくことを期待しています! そして、これからは行政や企業が連携し、私たち一般社団法人防災ガールのような非営利団体もともに連携することで、それぞれの強みを活かしあったまちづくりが鍵となっていく――そんな予感がするお話のできた素敵な対談でした。
Writer:一般社団法人 防災ガール 田中美咲